「やりたいことは、やってみないとわからない。」
整備だけじゃなかった。自衛隊で知った「自分の好き」と「苦手」
前回の記事では、25歳で自衛隊に入り、約6か月の教育期間を過ごしたことを書きました。
体力錬成、射撃、集団生活。
決して楽ではありませんでした。
それでも、同期と一緒に乗り越えていく中で、少しずつ自分に自信がついていきました。
そこで気づいたのが、
自信がついてから動くんじゃない。
動いた経験が、自信になっていく。
ということでした。
そして約6か月の教育を終え、いよいよ僕は希望していた車両整備の部隊へ配属されることになります。
ここからが、本番でした。
年下の「先輩」に教えてもらう
部隊へ配属された日のことは、今でも覚えています。
すごく緊張していました。
「ここに決まったんだ」
これから、この人たちと一緒に働いていく。
そう思うと、
「ちゃんとやらなくちゃ」
「まず何をすればいいんだろう」
いろいろなことを考えました。
部隊の中を案内してくれたのは先輩たちでした。
ただ、その先輩たちの多くが、僕より年下だったんです。
僕は25歳で自衛隊に入りました。
自衛隊では、年齢が上だから先輩になるわけではありません。
先に入隊し、経験を積んでいる人が先輩です。
だから僕も、
「自分の方が年上だから」
なんてことは考えないようにしました。
まずは一人ひとりに挨拶をする。
教えてもらったことを覚える。
そして、一生懸命働く。
新しい世界に入った以上、僕はまた新人でした。
日産で過ごした5年間は、無駄じゃなかった
とはいえ、僕には一つ強みがありました。
日産で約5年間、自動車整備をしてきた経験です。
実際に自衛隊の車両を触ってみると、
「あ、これは普通にできるな」
と思えることもありました。
一方で、
「自衛隊では、こうやって整備するんだ」
と、新しく教えてもらうこともたくさんありました。
ときには、
「こうやった方がいいんじゃないか」
と自分が思っていたことと、自衛隊でのやり方が違って、先輩と意見がぶつかったこともあります。
今振り返れば、それも当然だったと思います。
日産には日産で学んできたことがある。
自衛隊には自衛隊のやり方がある。
これまでの経験を持って新しい世界に入ることと、その世界のことを知っていることは、同じではありません。
自分の経験を活かしながら、新しいことは新しく学ぶ。
その両方が必要でした。
でも、一つだけはっきりしたことがあります。
日産で過ごした5年間は、決して無駄ではありませんでした。
あのとき身につけた整備の技術が、自衛隊でもちゃんと自分を助けてくれたんです。
自衛隊の仕事は、整備だけじゃなかった
僕が自衛隊に入って面白いと思ったのは、ここからでした。
車両整備だけではありません。
- スキー
- 射撃
- 格闘
- 山での訓練
- 体力錬成
本当にいろいろな経験をしました。
北海道出身の僕にとって、スキーそのものは珍しいものではありませんでした。
でも、全国から集まってくる自衛官の中には、それまでほとんどスキーをしたことがない人もいます。
そんな人たちが一生懸命練習している姿を見ると、
「北海道でスキーをやってきて良かったな」
と思うこともありました。
射撃も好きでした。
子どもの頃から、お祭りの射的なんかは結構好きだったんです。
もちろん、本物の銃を扱うことはまったく別物です。
それでも、狙うことや技術を身につけていくことには面白さを感じていました。
格闘では、自分の身を守るための技術を教えてもらいました。
山に入れば、普段の生活では経験できないことばかりです。
大変な訓練の中で、ふと星空を見上げて、
「ああ、自分は本当にこの世界に来たんだな」
と思ったこともありました。
一つひとつが、経験でした。
そして、一つひとつが、僕にとっての学びでした。
やってみたから「苦手」も分かった
ただ、面白いことばかりだったわけではありません。
実際に経験してみることで、
「これは好きだけど、これは苦手なんだな」
ということも少しずつ分かってきました。
例えばスキー。
滑ることは好きです。
技術を学んで、上達していくのも好きでした。
でも、順位をつけて競い合うレースになると、僕はあまり好きではありませんでした。
1位、2位、3位。
人と競うことに、強いプレッシャーを感じる自分がいました。
射撃も似ています。
撃つことや、技術を磨くことは好き。
でも、それが点数になって、
「合格」「不合格」
と評価されると、一気に精神的なプレッシャーが大きくなる。
格闘もそうでした。
自分の身を守る技術を学ぶことには意味を感じる。
でも、人と対決して勝ち負けを競うことは、それほど好きではありませんでした。
当時は、そこまで深く考えていなかったと思います。
でも今振り返ると、
僕は「学ぶこと」や「できることが増えること」は好きだけど、人と競争することにはあまり魅力を感じない人間だったのかもしれません。
それも、実際にやってみたから分かったことでした。
「好き」だけでは、自分のことは分からない
これって、今考えるとすごく面白いんです。
「スキーが好き」
という一言だけでは、本当の自分までは分かりません。
- 滑ることが好きなのか
- 上達することが好きなのか
- 競争することが好きなのか
- 人に教えることが好きなのか
同じ「好き」でも、中身は全然違います。
仕事だって同じだと思います。
「人と話すのが好き」
だからといって、すべての接客や営業が好きとは限らない。
「料理が好き」
だからといって、飲食店を経営することまで好きとは限らない。
実際にやってみることで、
「ここは好き」
「これはちょっと違う」
という自分の輪郭が、少しずつ見えてきます。
僕にとって自衛隊は、そんな経験をたくさんさせてもらえる場所でもありました。
いろいろやって、それでいい
もし今、あの頃の自分に会えるなら、
こんなことを言うと思います。
「いろいろやってるけど、それでいいよ。」
そのときは分からなくても、一つひとつの経験が自分の中に残っていくからです。
- 整備も
- スキーも
- 射撃も
- 格闘も
- 山での生活も
- 人間関係も
うまくいったことだけじゃありません
「これは苦手だな」
「これは自分には違うかもしれない」
そう思った経験だって、自分を知るための大切な材料になりました。
今振り返ると、いろいろな経験をしたことで、僕の世界は少しずつ広がっていったんだと思います。
やりたいことは、頭の中だけでは見つからない
今、
「やりたいことが分からない」
「自分に何が向いているのか分からない」
と悩んでいる人がいたら、僕はこう伝えたいです。
- まず、小さくやってみる。
- 調べてみる。
- 見に行ってみる。
- 誰かに話を聞いてみる。
- 一度だけ参加してみる。
そして、
「違うな」
と思ったら、やめたっていい。
やってみたからこそ、
「これは違った」
という一つの答えが手に入ったんです。
逆に、
「なんか面白いな」
と思ったら、もう少し続けてみればいい。
僕自身、人生の大きな分岐点は、最初から大きな決断だったわけではありません。
小さく外の世界を見てみる。
そんなところから始まっています。
だから、
やりたいことが分かってから、動くんじゃない。
動いてみるから、自分の「好き」と「違う」が見えてくる。
その小さな経験の積み重ねが、いつか自分でも想像していなかった場所につながることがあります。
当時の僕は、もちろんそんなこと知りませんでした。
目の前にある仕事や訓練に、一生懸命取り組んでいただけです。
でも、この先。
僕の人生は、また少しずつ動いていきます。
あなたへの質問
もし今、
「やりたいことが分からない」
「自分に何が向いているか分からない」
と感じているなら、一度こんなふうに考えてみてください。
答えを出すために、今日できる小さな経験は何でしょうか?
- 転職する必要もありません。
- 仕事を辞める必要もありません。
- 人生を大きく変える必要もありません。
- まず調べるだけでもいい。
- 一人に話を聞くだけでもいい。
- 一度だけやってみるのでもいい。
その一歩が、
「自分は、こういうことが好きだったんだ」
と知るきっかけになるかもしれません。
次回 MY STORY #04
自衛隊でさまざまな経験を重ねていった僕には、次の大きな目標ができました。
「絶対に、一発で三等陸曹になる。」
目標が明確になると、僕は驚くほどそこに集中しました。
勉強して、訓練して、本気で合格を目指す。
今振り返っても、
「あのときは、本当に人生をかけていたな」
と思います。
そして目標を達成した先で、僕はまた新しいことを考えるようになります。
続きは、MY STORY #04で。
普通の父ちゃんでも、人生は変えられる。
僕の人生は、まだまだ途中です。


